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マンションの大規模修繕工事とは?費用や期間、適切な時期などをわかりやすく解説

大規模修繕 | 2025年4月11日

マンションの購入にあたって知っておきたい「大規模修繕」。

聞きなじみのない言葉なので、以下のような疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

「マンションの大規模修繕ってなんだろう?」

「どのタイミングで大規模修繕が必要になる?」

「費用はどれくらいかかる?誰が払うの?」

そこで今回は、上記の疑問にお答えできるようマンションの大規模修繕について、

基本的なことからわかりやすく解説 。適切なタイミングや必要な費用など、様々な疑問にお答えしています。

ぜひご一読ください!

マンションの大規模修繕工事とは?

マンションの大規模修繕工事とは、マンションの共用部分について、「経年により劣化した建物を修繕」し、「美観性と機能性を復元・向上させる工事」のことをいいます。

一文にすると少し難しくなりますが、ポイントは「共用部分」、「劣化箇所の修繕」、「美しさと快適さの復元と向上」の3つです。

マンションの「共用部分」とは、簡単に言えば、「玄関扉の内側の居室」(=専有部分)を除いた箇所をいいます。屋上や外壁、外部の廊下や階段などが共用部分に該当します。誤解されがちですが、バルコニーも共用部分です。

また、給排水管やエレベーターも共用部分ですが、一般的には「大規模修繕工事」に含めて考えることはありません。

マンションの大規模修繕工事の必要性

建物は、雨や太陽光、気温・湿度の変化など、外部的な要因や、地震などの地殻変動によって、少しずつ劣化していきます。幹線道路が近い場合や海が近い場合には、排気ガスや潮風によって建物の劣化が早まることもあるでしょう。

建物の劣化は、最初のうちは進行速度が遅いと言われていますが、劣化した箇所を放置していると、さらなる劣化をもたらし、建物全体の劣化は加速度的に進行します。最初は小さなひび割れに過ぎなかったものでも、そこから雨水が浸入すれば、やがて雨漏りやタイルの剥落といった実害に発展することもあるのです。

ところで、日本のマンションの大半は、耐震性・耐火性・遮音性・断熱性などに優れた「鉄筋コンクリート造」と呼ばれる工法を採用しています。鉄筋コンクリート造のマンションは、鉄筋と呼ばれる直径数センチの鉄の棒の周囲を、数十センチのコンクリートで覆った柱や梁などの骨組みによって支えられています。錆に弱い鉄の周囲を、アルカリ性のコンクリートで覆っている「鉄筋コンクリート」は、最強の構造体といえるでしょう。

しかし、最強といわれる鉄筋コンクリート造の建物でも、大気中の二酸化炭素や、コンクリート表面のひび割れから浸入した水分や空気によって、鉄筋に錆が発生したり、コンクリートが中性に近づいたりして、建物の強度が低下していきます。

そのため、定期的に修繕を実施して、建物の強度の低下を防止することが必要となるのです。

経年劣化が避けられない建物にとって、マンションの大規模修繕工事は、寿命を延ばし、いつまでも安全かつ快適な居住空間を維持するために必要不可欠なものと言えるでしょう。

なお、大規模修繕工事の実施時期は、建物の立地条件や、新築工事の施工環境などによって異なりますが、約12年に一度のペースで行うことがベターであると考えられています。実際に多くのマンションで約12年ごとに実施されているようです。

マンションの大規模修繕工事の実施メリット5つ

マンションの大規模修繕工事を実施するメリットには、以下の5点が挙げられます。

  • 建物の寿命を延ばす
  • 資産価値が向上する(維持される)
  • 住環境が向上する
  • 安全性が確保される
  • 結果的に修繕費用が抑制される

それぞれ詳しく見ていきましょう。

建物の寿命を延ばす〜建物の寿命は何歳?〜

もし、マンションの新築後、一度も大規模修繕工事を実施しない場合、建物の寿命は何歳になるのでしょう? 

一般的には建物の寿命は50年程度と言われています。もちろん、「建っている」だけであれば50年以上存続することも予想されますが、天井や外壁の崩落や床が抜け落ちるといった安全性の問題や、雨漏りや赤水の発生など快適性の問題を加味すると、新築から何も手を加えない場合の建物の寿命は50年というのが妥当なのかもしれません。

これに対し、定期的に大規模修繕工事を実施した場合、建物の寿命は100年以上になると予想されています。適切に大規模修繕工事を実施することによって、建物の寿命は2倍以上に延びるのです。

資産価値が向上する、維持される

建物の資産価値の指標はいくつもありますが、「売却価格」や「賃貸価格」を参考にすると、イメージを描きやすいようです。

都心部などプレミアムな立地条件のあるマンションを除くと、「古い」&「手入れが行き届いていない」マンションは、売却価格や賃貸価格が低くなる傾向があるようです。「古い」マンションは「給排水設備の老朽化」や「雨漏り」のリスクが懸念されますから、「手入れが行き届いていない」マンションは、そういったリスクが価格を下振れさせるのでしょう。「手入れが行き届いていること=定期的に大規模修繕工事を実施していること」は、建物の資産価値にとって重要な要素なのです。

特に、古いマンションでは、大規模修繕工事で玄関扉や床シートなどを交換することによって、不動産サイトの販売価格が20%以上になるケースも見られます。

定期的に大規模修繕工事を実施することによって、資産価値が維持・向上すると言えます。

住環境が向上する

大規模修繕工事の目的は、「経年により劣化した箇所」を修繕するだけではありません。日々の生活の中で、不便を感じるようになった箇所をリフォームし、快適性を向上させることも大規模修繕工事の目的の1つと言えるのです。

例えば、駐車場の増減、宅配ロッカーの増設、集合郵便受けの大型化、鳩やカラスの飛来の予防など、マンション新築時には想定していなかった様々なニーズに応える工事も大規模修繕工事の際に実施されます。

大規模修繕工事は、住環境を大きく向上させるという側面もあると言えるでしょう。

安全性が確保される

社会情勢の変化に伴い、マンションの新築時には想定できなかった問題が発生することがあります。特に近年では防犯対策の一環として、侵入防止対策、照明や監視カメラの増設といったニーズが高まっています。またバリアフリー化などによってマンション共用部での安全性を向上させようという動きも高まっています。

大規模修繕工事の際に「マンションの安全性を向上させる工事」を実施する潮流は日に日に大きくなっていると言えるでしょう。

結果的に修繕費用が抑制される

仮に100年のスパンで考えた場合

大規模修繕工事を1回も実施しなければ、鉄筋コンクリート造のマンションの寿命が50年と想定すると、100年の間に、「解体 + 新築」の費用が掛かることになります。これに対し、12年に一度のペースで大規模修繕工事を実施すれば、マンションの寿命は100年以上に延びますから、100年のスパンで考えると、「8回分の大規模修繕工事」の費用が掛かることになります。

ちなみに、2025年3月の相場では、鉄筋コンクリート造の建物の解体費用は8万円/坪、新築費用は100万円/坪ですから、100年のスパンでは、108万円/坪の費用が掛かる計算になります。

これに対し、大規模修繕工事の1回の相場は6万円/坪ですから、8回分で48万円/坪の費用が掛かる計算になります。

まとめますと、100年のスパンで考えた場合、定期的に大規模修繕工事をする場合(48万円/坪/100年)と、一度も大規模修繕工事をしない場合(108万円/坪/100年)では、2倍以上の費用が掛かることになるのです。

現実には、大規模修繕工事を実施しないといっても水道管の破裂や雨漏りなどの緊急対応的な費用の発生が予想されます。解体と新築を伴う建替えを行うことは建替決議の難しさを考えると非現実的という意見も根強くあります。

このように12年ごとに大規模修繕工事を実施することによって、修繕費用を大きく抑制することができます。

どんなことをする? マンションの大規模修繕工事の内容

ここでは、マンションの大規模修繕工事の内容を解説します。

マンションの大規模修繕工事は、以下のような流れで行われます。

1. 共通仮設工事 現場事務所・作業員休憩所・資材倉庫などの設置、エレベーター等のの養生、工事用掲示板の設置など、工事を本格的に開始する前に必要な準備工事を言います。
2. 直接仮設工事 足場やゴンドラなど、マンションの外壁等の工事を行うために必要な「足場」を設置します。
3. 下地補修工事 経年により劣化した箇所を修繕します(ひび割れの補修など)。
4. シーリング工事 サッシ廻りなどの緩衝のための防水ゴムを撤去して新しくします。
5.  塗装工事 天井や壁を塗装します。また鉄(ステンレス・アルミ等を除く)も塗装します。
6.  防水工事 バルコニー・廊下・屋上などの床を防水します。
7.  その他工事 清掃作業やそのマンション特有の工事を行います。

※   2〜7の作業終了後に、足場・ゴンドラの解体作業を行います。
※   3〜7の作業のうち、足場・ゴンドラの解体後に実施した方が良い作業がある場合は、解体後にそれらの作業を行います。

このように、大規模修繕工事では「1.共通仮設工事」と「2.直接仮設工事」は工事のための準備を目的とし、「3.下地補修工事」は経年による劣化箇所の修繕を目的とし、「4.シーリング工事」「5.塗装工事」「6.防水工事」は美観性と機能性を復元・向上させることを目的とする工事と言えます。

大規模修繕工事に着工するまでの流れ

マンションの大規模修繕工事は、以下の流れを経て実施されます。

  •   新築または前回の大規模修繕工事から10年が経過。
  • マンションの劣化診断を行い、大規模修繕工事が必要かどうかを検討します。

(※ 診断は管理会社が行うことが多いようです。診断費用は20万円〜50万円程度といわれます。近年は、たとえ診断の結果、大規模修繕工事の必要性が切迫していない場合でも、12年以上経過しているのに先送りという判断は難しいのであるという理由で、診断を省略するマンションも増えているようです。)

  •   大規模修繕工事を実施する工事範囲と、工事の仕様(材料や工法)、概算予算、工事の実施時期を決めます。

(※ これを設計業務と言います。設計業務はコンサルタントや設計事務所、管理会社に依頼することが多いようです。)

  •   大規模修繕工事の進め方を決めます。設計監理方式か住民参加方式か

設計監理方式; 上記の設計業務に加えて、大規模修繕工事のコンサルタントが主体と

なって工事会社を選定し、コンサルタントが工事の品質管理(工事監理)を行う方式。

住民参加方式;    マンションの区分所有者(管理組合・理事会・修繕委員会)が工事会社を選定し、工事会社自らが品質管理を行う方式。(※ 工事の品質管理を第三者に依頼する場合もある)

コメント) 設計監理方式は談合の温床になっており、2025年には多くの工事会社に対して公正取引委員会の調査が行われました。また、設計監理方式は住民参加方式に比べて工事価格が20%〜50%程度も高額化する傾向が強いといわれています。さらに、コンサルタントの多くが実務に関する知識と経験に乏しいため、管理組合が期待するほどの工事監理が実施されていないという批判もあります。

  • 見積もりを依頼する工事会社の決定(3社〜8社程度)
  • 工事会社による現場立会いと質疑、設計者の回答
  • 工事会社による見積書や会社案内の提出と、開封
  • 工事会社の絞り込み(3社程度)

※   価格や技術などの情報をもとに、管理組合が直接話を聞きたいと思う工事会社を絞り込みます。

  •   ヒアリング

※   工事会社から直接、会社の特徴や工事の進め方、他の会社と差別化している技術やサービスについて話を聞くとともに、担当者に直接質問します。

  •   工事会社の決定

ヒアリングの後、多数決で、大規模修繕工事を実施する工事会社を決定します。

総会(通常総会または臨時総会)で、決定した工事会社の承認決議を諮ります。

  •   工事説明会

居住者に対して、大規模修繕工事の工事説明会が開催されます。

  •   工事着工

マンションの大規模修繕工事に掛かる費用の目安

マンション大規模修繕工事に掛かる費用は、材料価格の高騰や人件費の高騰を受けて、年々値上がりしています。

2025年3月時点では、お部屋の広さが80平方メートル前後のファミリータイプのマンションの場合、総戸数×150万円程度が平均的な工事価格と言えるでしょう。例えば、総戸数100戸のマンションの場合、100戸×150万円で=1億5000万円が一般的と言えます。

しかし近年では、戸あたり150万円の予算を確保することが難しいという理由で、屋上防水や、廊下や階段の床のシート貼り工事など、足場がなくても施工可能な箇所を大規模修繕工事の工事範囲から除外する傾向が見られます。

マンションの大規模修繕工事の適切な周期と回数

「日本のマンションブームは、1970年の大阪万博の少し前から始まったといわれていますから、それから50年近くが経過し、古いマンションでは4回目の大規模修繕工事が行われているようです。」と言った感じで良いですか?

マンションの大規模修繕工事は、12〜15年に1回の周期で行われることが一般的です。

これは、屋上防水など主要な建築資材の保証期間が最長で10年間であることや、耐用年数も最長で12〜15年程度であることがその理由と言われています。

建築材料は耐用年数を経過すると、雨漏りの発生などのリスクや、鉄筋コンクリートへの雨水の浸入により建物の寿命を縮めるリスク、コンクリート等の剥落など居住者及び通行人に対する事故のリスクなど、多くの危険が拡大するからです。

また、工事の回数が増えるごとに、修繕周期が短くなる傾向があります。

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、工事回数別の平均修繕周期は以下の通りです。

  • 第1回目:15.6年
  • 第2回目:14.0年
  • 第3回目:12.9年

これは、マンションの老朽化が進むにつれて、より頻繁なメンテナンスが必要になるためです。

マンションの大規模修繕工事にかかる工事期間

マンションの大規模修繕工事にかかる工事期間は、マンションの規模によって異なります。

一般的には、総戸数50戸未満であれば3ヶ月、総戸数100戸未満であれば4ヶ月、総戸数150戸未満であれば5ヶ月・・、というふうに50戸を超えるごとに1ヶ月ずつ長くなると言われていますが、タワーマンションなどの高層マンションは作業効率が低いため、長期化する傾向があります。

マンションの大規模修繕工事のトラブル防止と成功のためのポイント

マンションの大規模修繕工事では、トラブルを防止するために以下のようなポイントを抑えておく必要があります。

  • 事前準備の徹底
  • 関係者間のコミュニケーションと合意形成
  • 工事中の管理と品質確保
  • 適切な施工業社の選定

それぞれ詳しく見ていきましょう。

事前準備の徹底

「段取り八分」と言われるように、マンションの大規模修繕においても事前準備が重要です。

居住者としては、工事着工前の「工事説明会への出席」「バルコニー内の荷物の整理」「網戸の取り外し準備」の3つの準備が重要といえるでしょう。特に、バルコニー内の工事を実施する際には、バルコニー内の荷物を室内などに移動させることが求められます。通常、バルコニーには10年以上かけて蓄積された居住者の荷物があると思われますので、お部屋によってはかなりのボリュームになる場合もあります。工事が始まるとすぐに移動できるように予め整理することが重要といえるでしょう。

また、理事会・修繕委員会としても、大規模修繕工事で塗り替える色の決定や、素材の決定など早く決めておいた方が良い項目は山積みです。これらについても大規模修繕工事が始まる前(遅くとも足場等の仮設の設置が完了するまで)に決めておいた方が良いと思われます。

関係者間のコミュニケーションと合意形成

マンションの大規模修繕工事においては、工事期間中に、工事の担当者(通常は現場監督)と理事会・修繕委員会が出席して、「定例」と呼ばれる打合せを開催することが一般的です。特に大規模修繕工事の前半部分は、居住者から様々な要望やクレームが発生し、かつ決定すべき事項も増える傾向がありますので、最初のうちは週に1回程度、その後は2週間に1回程度の頻度で、「定例」を開催し、コミュニケーションを密にとることが大切だと思われます。

工事中の管理と品質確保

マンションの大規模修繕工事においては、「品質の管理」「品質の確保」が最も重要です。この「品質の管理・確保」を、①工事会社(実質は「現場監督」)だけに任せるのか、②工事会社の他にコンサルタントなどの第三者にも依頼するのか、を検討する必要があります。①の方法は、工事会社だけに任せるのは不安という心配がある一方で、金額を安く抑えることができるというメリットがあます。これに対して②の方法は、コンサルタントに任せられるイメージがありますが、一方で、コンサルタントの業務費用に加えて談合などによって工事金額が想像以上に高額化するという懸念があります。また、昨今の人手不足と人材育成の空洞化によって、現場監督もコンサルタントも能力の低下が危惧されています。これは工事会社やコンサルタントの会社規模の大きさや、現場監督やコンサルタントの資格の有無に関係ありません。

大規模修繕工事において「品質の管理・確保」を確実に行うことを望む場合は、「管理をする人そのもの」の能力に注目する必要があるのです。

※   関連記事:「施工の神様」 https://sekokan-navi.jp/magazine/77441

適切な施工業者の選定

マンションの大規模修繕工事においては、「施工業者」選びが重要です。

大規模修繕工事の施工業者は、大別すると、「管理会社系」「コンサルタント系」「独立系」の3つに分類できます。

「管理会社系」とは、管理会社やその関連会社、または管理会社と特別の関係にある登録会社が大規模修繕工事の元請けとなるケースです。管理会社としても、面識のない会社に工事をされると、その後の管理に不安があるという判断から、自社・関連会社・登録会社に工事をさせたいと考えるようです。しかし、「管理会社系」の施工業者は、競争原理が働くことがないため、工事価格が高額化する傾向があります。

「コンサルタント系」とは、マンションの大規模修繕工事をコンサルタントの主導で行う場合(設計監理方式など)に、コンサルタントと特別の関係のある工事会社が、大規模修繕工事の元請けとなるケースです。マンションの管理組合・理事会・修繕委員会としても、慣れない大規模修繕工事をコンサルタントに伴走してもらえれば頼もしいですし、「品質の管理・確保」もコンサルタントに一任することができるため、リスクヘッジが期待できると考えるのでしょう。しかし、コンサルタントも初めて顔を合わせる工事会社を監理することは手探りな部分が多いことから、顔馴染みの工事会社が受注できるように誘導するため、工事価格が想定以上に高額化する傾向があります。

2025年3月、公正取引委員会が「管理会社系」と「コンサルタント系」の複数の工事会社に対して、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査を行ったニュースは記憶に新しいですが、これらの一連のニュースは「管理会社系」と「コンサルタント系」の施工業者による工事が不当に高額であることの証左と言えるかもしれません。

これに対し「独立系」とは、管理会社やコンサルタントとはまったく関係の無い施工業者が元請けとなるケースです。新築を施工した会社や、理事会・修繕委員会などのマンションの居住者がwebサイトなどで見つけてきた工事会社が該当します。

「管理会社系」や「コンサルタント系」の施工業者による工事価格の高騰が叫ばれている現在、大規模修繕工事の施工業者は「独立系」の中から選んだ方が、価格を抑えることができるようです。

 そして、「独立系」の施工業者の中から、マンションのニーズ(技術力重視、フットワーク重視、会社規模や歴史を重視、会社の知名度を重視など)にマッチする施工業者を見極めて、そのマンションにとって最適な施工業者を選定することが大規模修繕工事の満足度を高めることに繋がると思われます。

大規模修繕工事の業者選びのポイントは?

マンションの大規模修繕工事の業者選びで重視されるトップ3は、

  • 工事価格の安さ・・・・金額
  • 高い品質・技術力・・・品質
  • 信頼できる会社・・・・安心

と言われています。

一般に、会社規模が大きくなればなるほど、経費がかかるため、工事金額は高くなると言われます。また、会社規模が大きいほど、価格に見合った高品質の工事を実施してくれそうな気がしますし、信頼できる会社のような気もします。

確かに、そのようなイメージは真実を捉えている面もございますが、それほど単純ではありません。

マンションの大規模修繕工事の業者選びは、この3つの要素の何を重視するかによって大きく異なってきます。そこで「金額」・「品質」・「安心」の関係について、解説します。

大規模修繕工事の施工業者の「金額」と「安心」の関係

マンションの大規模修繕工事の施工業者を、その特徴に応じて6つのポジションに分類すると、「会社規模」と「工事金額」の関係が明らかになります。

ポジション1;未熟者

会社規模が小さすぎたり、工務店の名前は冠しているものの、ほとんど大規模修繕工事を施工した経験・実績がない工事会社です。

ポジション2;安かろう悪かろう

工事金額が安いだけで、品質がサッパリという工事会社です。

ポジション3;コピぺの達人・・規模の小さな改修専門会社など

大手のノウハウを「コピペ」して、大規模修繕工事を事業の主軸としている工事会社です。

ポジション4;イノベーター・・技術力のある規模の小さな改修専門会社

大手のノウハウを「コピペ」するだけでなく、それを改善し、かつ独自の技術革新に基づく「オリジナルなノウハウ」を加味して実践している工事会社です。

ポジション5;ローカルスター・・地方工務店など

役所が発注する公共工事をメイン事業とする地元では有名な工事会社です。

ポジション6;ジャイアント・・大手ゼネコン・管理会社・規模の大きな改修専門会社など

大規模修繕工事だけでなく、ビルやマンションの新築工事を行う工事会社や、大規模修繕工事だけで年商50億円を超える改修専門会社、全国区の管理会社などです。

 マンションの大規模修繕工事の業者選びで重視されるトップ3のうち、「工事価格の安さ(金額)」と「信頼できる会社(安心)」の2つだけを比較すると、上の表のような関係があると言えます。

信頼・安心できる会社に、できるだけ金額を抑えて工事を発注したいのであれば、大規模修繕工事は「イノベーター」のポジションの業者に依頼することがベストな選択と言えます。しかし、金額が高くても、より信頼・安心できる会社に依頼したいと考えるのであれば、「ジャイアント」のポジションの業者に依頼することがベストな選択と言えるでしょう。

もちろん、「品質・技術力」を度外視した場合の話ではありますが・・。

大規模修繕工事の施工業者の「品質」と「安心」の関係

マンションの大規模修繕工事の施工業者を、その特徴に応じて6つのポジションに分類すると、「会社規模」と「品質・技術力」の関係についても明らかになります。

より技術力の高い会社に工事を依頼したいのであれば、大規模修繕工事は「イノベーター」のポジションの業者に依頼することがベストな選択と言えます。しかし、技術力は平均レベルでも、より安心できる会社に工事を依頼したいとと考えるのであれば、「ジャイアント」のポジションの業者に依頼することがベストな選択と言えるでしょう。

もちろん、「価格」を度外視した場合の話ではありますが・・。

大規模修繕工事の施工業者の「金額」と「品質」の関係

マンションの大規模修繕工事の施工業者を、その特徴に応じてポジショニングすると、「金額」と「品質・技術力」の関係も明らかになります。

より技術力が高く、より工事金額を抑えて大規模修繕工事を完成させたいのであれば、大規模修繕工事は「イノベーター」のポジションの業者に依頼することがベストな選択と言えます。

 

大規模修繕工事における特別な技術〜「イノベーター」の例

大規模修繕工事において、最も問題となるものの1つに「追加工事」があります。その中でも「下地補修工事における実数精算」が大きな社会問題となっています。

下地補修工事における実数精算とは、

  1. 建物がどれくらい劣化しているかは足場等を設置して調査してからでなければ分からない。
  2. そこで、想定した劣化数量(想定数量)に基づいて契約し、足場設置後に詳しく調査をして精算する

という考え方です。

一見すると公平なシステムのように思われますが、足場設置後に膨大な金額の追加費用を請求されるケースが各地で相次ぎ、大きな問題となっています。

実際、足場が設置された状態で「これだけ劣化しています」と施工業者から報告を受けたら、マンションの管理組合・理事会・修繕委員会としてはノーと言える余地がありません。工事会社の言いなりになって数百万円、多い時には1千万円を超える追加費用を支払わなければならない場合もあるようです。

また、そのような追加費用が発生しては困るからと、管理会社やコンサルタントが「想定数量」をかなり多めに設定し、実際の劣化の程度が想定よりも遥かに少ない場合でも返金しないケースも多発しているようです。

公平なはずの「実数精算方式」は、大規模修繕工事において施工業者がボッタクリを行うためのブラックボックスになっているというのが実情と言えるでしょう。

そのような時代背景の中で、人工知能技術によって、工事着工前に建物全体の劣化数量を算出し、実数精算方式を行わない技術が開発され、一部の施工業者によって導入されています。

このような特別の技術を保有している施工業者が「イノベーター」に分類されると言えるでしょう。

まとめ

マンションの大規模修繕工事は、マンションの寿命や資産価値を左右する重要なものといえます。

これまでは、管理会社や大手企業に依頼すれば、多少は高額だったとしても、マンションにとってベストな工事が行われるものと考えられていました。

しかし、最近は管理会社や大手企業の提示する工事価格が「多少は高額」というレベルを超え、「法外に高額」となっているように思われます。しかも「法外に高額」な工事金額を払ったとしても、昨今の管理会社・大手企業は現場監督の人材育成が空洞化しているため、平均レベルの工事を実施することが精一杯というケースが多いことも問題です。

マンションの修繕積立金に余裕があるのであれば、「法外に高額」な「平均レベル」の工事にも一定の理解があったのかもしれませんが、修繕積立金会計が不足し、毎月の修繕積立金を値上げせざるを得ないマンションが日本各地で広がっている現状を考えると、管理会社や大手企業に任せるのではなく、自衛のために、より低価格な工事会社を住民自らが探さなければならない時代が来ているのかもしれません。

昨今、マンションの住民が紹介・推薦する会社に工事を発注する動きが高まっていますが、そのような動きを阻止するため、「第三者管理方式」や、「大規模修繕工事の支援プラン」などの「縛り」のある契約を締結させたり、住民紹介の工事会社にネガティブキャンペーンを行う管理会社も増えているようです。

まずは、高い技術力と低価格を両立している「イノベーター」のポジションに分類される工事会社の話を聞いてみてはいかがでしょうか?

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